過度な習い事は子どもの成長を妨げる

少子化や共働き家庭の増加により、子ども一人当たりの教育費は増加傾向にあります。

ひとりっ子ともなれば、そこに向けられる情熱は「絶対に失敗できない」という強迫観念と表裏一体になり、お金や時間が惜しみなく注がれます。わが子により良い教育を受けさせようと、幼少期から週5日、毎日違う習い事に通わせる親も珍しくありません。中には1日2件の習い事をはしごするなど、忙しい毎日を送っている子どももいます。

しかし、子どもの脳の発達を考えるのであれば、家庭生活そのものが脳を最も刺激し、子どもの得意なことを伸ばすのに最適な場所だと言えます。幼少期から発達する「からだの脳」に加え、小学生以降は「おりこうさんの脳」が本格的に、そして「こころの脳」も育ち始めます。

家庭では、毎日のルーティンの中で、同じメンバー間で決まった言動が繰り返し行われますが、これが子どもの「おりこうさんの脳」や「こころの脳」を育てる重要な刺激となります。親の言葉や表情、物事の捉え方や子どもとの接し方などが、学習塾や習い事よりもずっと大きい部分で子どもの脳育てに影響を与えるのです。

「学力」だけではなく「学習力」も身につけるべき

私は勉強とは本来、楽しいものだと思っています。教科書に書かれた知識を丸暗記するのではなく、自分で論理や思考をめぐらせながら、興味がわいたことを一つずつ学んでいく過程に喜びを感じます。自分の中に一つひとつの点として置かれていた知識が、ある時つながり、線となって広がった瞬間の世界がひらける感動は、何物にも代えがたいものです。

ですから、個人的には試験対策に見られるような詰め込み式の学習は好きではありませんが、だからといって脳科学的に意味がないわけではありません。脳のシナプスをつくるためには、繰り返しの刺激が重要ですから、知識を記憶するという点では効果があります。

しかし、それで勉強の喜びに触れることができるのか、子どもが自ら学ぼうとする意欲を育てることができるのかは甚だ疑問です。詰め込み式の学習では、「学力」は身につきます。学力は、「おりこうさんの脳」を活性化させ、新たな知識や情報を得ることで育っていきます。

例えば、漢字ドリルを使って一生懸命、漢字を書いて覚えれば「おりこうさんの脳」が働き、知識は身につきます。しかし、たくさんの漢字や四字熟語を覚えても、それを自身の文章の中に織り込むことができなければ、論理や思考は育ちません。その人ならではの論理や思考は独創性と呼ばれ、「こころの脳」の働きによって育まれます。

人は独創性を発揮できた時に喜びを感じ、「もっと勉強して新しい知識を身につけたい」と自然に思えるようになります。この脳の働きを、私は「学力」と区別して「学習力」と呼んでいます。

学習力を伸ばすには家庭での学習が最適

残念ながら今の教育制度は、子どもの「学力」を伸ばしてもらうことはできても、「学習力」を育ててもらうことはあまり期待できません。そこで必要なのが、家庭での学習です。生活こそが子どもの「学習力」を伸ばす場だと考えます。

では、学校で習った「学力」を「学習力」に昇華させるには、どのような方法があるでしょうか。例えば、学校で習った漢字を何回もノートに書き写す代わりに、一つの漢字をピックアップし、その字にまつわる世界を広げていきます。では問題です。あなたは「本」という漢字で、どれだけ世界を広げられるでしょうか?

次のような質問を、子どもに投げかけてみるのも一つの方法です。

「親が一緒に楽しめるもの」を基準にするといい

他にも「“本”がつく言葉を思いつくだけ挙げてみよう」「“1本”“2本”と数えるものには何がある?」など、いくらでも考えられます。親も引き出しを増やす必要がありますが、親が通り一遍の学習や正解にとらわれるのをやめれば、子どもの世界はどんどん広がっていきます。

学習塾や習い事を全面的に否定するつもりはありません。週にいくつか、本人が楽しむことができ、無理のないスケジュールで取り組む分には問題ないと思っています。私自身、娘を学習塾や予備校に通わせていたことはありますし、幼少期にはピアノも習わせていました。

親の姿を見ることで自然とやる気が出てくる

このように、子どもの意思がまだはっきりとしない幼少期は、習い事に限らず、親が主体となって楽しめるものに子どもを巻き込むのがお勧めです。私の場合はピアノでしたが、英語が好きな親御さんであれば子どもと英会話教室に通うのもいいでしょうし、水泳が好きなら親子でスイミングスクールに通うのもいいと思います。

その際、子どもだけ通わせるのではなく、必ず親子で楽しむことが前提です。スイミングスクールでよくあるのが、子どもが泳ぐ姿を、親が観覧席からガラス越しにただじっと見つめているという光景です。しかし、特に子どもが幼いうちは、一緒に習い事に取り組む中で、親自身が率先して楽しむ姿勢を見せることが大事です。親が楽しむ姿から、子どもは「自分ももっと上手くなりたい」「一緒に楽しみたい」と自然といい影響を受けます。

あるお父さんは釣りが趣味で、息子さんが幼少期の頃から休みのたびに一緒に海に出かけていました。息子さんは釣りを通して、魚をはじめとする海の生物全般に興味をもつようになりました。大学では水産学部に進学し、下宿先には13個もの水槽を置いて、ありとあらゆる海の生き物を飼育しています。幼少期にお父さんと釣りを楽しんだ経験が、彼の進路に大きな影響を及ぼしたことは明らかです。

親が熱中しすぎるのはNG

気をつけなければならないのは、親が熱中しすぎないことです。

特に子育て科学アクシスに相談に来られる親子で多いのが、地域のサッカーチームや野球チームなどでお父さんがコーチをしている場合です。わが子の指導に熱が入るあまり、自分の子どもに人一倍厳しく接し、チームメイトの前で「おまえのせいでチームが負けた」などと叱責してしまう人もいます。たとえ期待の裏返しであっても、全員の前でいつも自分ばかり叱られていたら、子どもの心は折れてしまいます。

その結果、自己肯定感が著しく低下し、何をするにも「どうせ自分はダメだ」と無気力になってしまったお子さんをたくさん見てきました。ですから、趣味にしろ習い事にしろ、親自身が肩の力を抜いて楽しむことを意識しましょう。その上で、親子で楽しい時間を共有できるものをぜひ見つけてください。

「子どもが、自分から『やりたい』と始めた習い事を、飽きたからといってすぐに辞めさせてもいいですか?」

これは、親御さんからのよくある相談の一つです。子どもが習い事に行きたがらない、練習をサボってばかりいる、という状態になったなら、スパッと辞めさせることが肝心です。親御さんの中には、「自分から好きで始めたんだから、責任をもってちゃんと続けなさい」とできるだけ継続させようとする人もいます。ですが、本人にやる気がないものを強制的に続けさせても、あまり意味がありません。

そうなる前に、本当にやらせるべきかどうか、習い事を始める段階でよく吟味することが大切です。幼い子どもは好奇心旺盛ですから、大抵のことに興味をもち、すぐに「やりたい」と言い出します。しかし、それを鵜呑みにしてはいけません。

過度な期待を背負わせるより、子どもと一緒に遊ぶべき

まずは体験教室などで子どもの様子をしっかりと観察し、「この子に向いてそうだな」「本当に楽しんでいるな」と思えるものであれば、やらせてみてもいいと思います。その場合も、幼児なら夜8時まで、小学生なら夜9時までには就寝できるスケジュールを組みましょう。

ただし、時間は有限ですから、習い事をやればやるほど、子どもが家庭で過ごす時間は短くなります。それを差し引いてでも「習い事で学ぶことの方が、この子の人生に役立つ」と思えるのであれば通わせてもいいと思いますが、そうした習い事は実はそんなに多くないと実感しています。ましてや親御さんが、「もうちょっと頑張らせれば、いつか習い事にかけたお金が何倍にもなって返ってくるのではないか」と賭け事のように思っているのであれば、絶対に辞めさせるべきです。

ほとんどの場合、子どもは親の期待通りには育ちませんし、親のエゴにより過度な期待を子どもに背負わせるべきではありません。それよりも親子で一緒に出かけたり、遊んだりする中でさまざまな体験をさせる方が、子どもにとってずっと充実した時間になるはずです。

子どもの学力を伸ばすためには、どんな子育てを心がけるべきか。小児科医の成田奈緒子さんは「学力の伸ばすためには、勉強ではなく『よく食べて、よく寝て、規則正しく生活する』ことが大切だ。脳には大きく分けて3つの発達段階があるが、子どもの頃から勉強をさせすぎると脳が成長する順序を乱してしまう。5歳までは『立派な原始人』を目標にして育てるべきだ」という――。(第2回)

生活の軸を基本にして、残った時間で勉強をする

脳育ての理論において、私が何よりも重視しているのは早寝早起きと睡眠時間という「生活の軸」です。まずは生活の軸を守った上で、次に食事や入浴といった生活に必要な時間を差し引き、最後に余った時間を勉強にあてるのです。

勉強をやらなくても子どもの成長に支障はありませんが、勉強を強制されることで心身にさまざまな症状が現れてしまった子どもを今までに数多く見てきました。「そんなことをいっても、子どもが落ちこぼれたら将来かわいそう」と思われるかもしれません。

しかし、学ぶことの重要性を自分で理解できれば、子どもは自ら勉強をするようになります。それが子どもの脳を育てるということです。隣で子どもにつきそいながら時間をかけて勉強を教えても、残念ながら子どもの脳を育てる根本的な方法にはならないのです。

脳の発達には“3つの段階”が存在している

規則正しい生活や睡眠時間に私がこだわる理由は、人間の脳が発達する順序にあります。

人間の脳は、生後約18年かけ、大きく3段階に分かれて発達します。私はこの三つのパートを、発達する順番に「からだの脳」「おりこうさんの脳」「こころの脳」と呼んでいます。この順番が変わることは決してありません。最初に発達する「からだの脳」は脳の中心部に位置し、大脳辺縁系や視床下部、中脳などを指します。呼吸や体温調整、寝る、起きる、食べる、体を動かすといった極めて原始的な機能を司る、人間の生命維持装置に当たる部分です。

次に発達するのが、脳の外側を広く覆っている「おりこうさんの脳」です。脳のしわの部分である大脳新皮質を指し、読み書きや計算、記憶、思考、指先を細かく動かす微細運動などをコントロールしています。中心部の「からだの脳」が原始的な動物にも備わっているのに対し、外側部分の「おりこうさんの脳」は、進化の過程で発達した人間らしさを司る機能を担います。そして最後に発達するのが「こころの脳」です。

「おりこうさんの脳」の一部である前頭葉と「からだの脳」をつなぐ神経回路のことを指します。「こころの脳」が発達すると、論理的思考力や問題解決能力、想像力、集中力などが身につき、物事を論理的に考えたり、衝動性を自制できたりするようになります。

順序を間違えなければ、何歳からでも脳は育つ

三つの脳はそれぞれ発達するタイミングが決まっており、0歳では「からだの脳」、1歳頃からは「おりこうさんの脳」、そして10歳頃から「こころの脳」が発達します。「からだの脳」は生きる上で最も大切な脳であり、0〜5歳にかけて盛んに育ちます。この脳が体内時計を動かすことで、朝は覚醒し、夜は入眠することができます。

昼間は身体活動を行うために活発に自律神経を活動させ、空腹になれば食欲を起こし、きちんと食事を摂ることができます。「からだの脳」が育たないことには、後に続く「おりこうさんの脳」も「こころの脳」も上手く育たないため、脳全体の土台部分といえます。

この「からだの脳」を育てるために必要なのが、規則正しい生活と十分な睡眠時間です。幼少期はとにかくよく食べ、よく動き、よく眠ることで「からだの脳」を育てることが何よりも大切です。

もし、脳育ての順番が間違っていたことに気づいても、慌てる必要はありません。脳は何歳からでもつくり直すことが可能です。人間の脳内には、情報処理を行う神経細胞・ニューロンが通常150億〜200億個あると言われています。このニューロンが複雑に結びつき、情報伝達を行うことで脳は発達します。

成人期には約100億個の脳細胞がつながりますが、残りの50億〜100億個の脳細胞はつながらずに残り、死ぬまでつながりが増え続けることが脳科学の研究から明らかになっています。このつながりを増やすことで、何歳からでも脳を育てることは可能です。

特に発達途中である子どもの脳は「可塑性(かそせい)」といって、とても柔軟性が高く、新しい刺激によっていくらでも変化させることができます。ですから、順番を間違えていると思ったら、まずは規則正しい生活を心がけ、「からだの脳」づくりから始めてみましょう。

早期から「おりこうさんの脳」を育てる必要はない

特に5歳までの子どもは、何をおいても脳の土台となる「からだの脳」を育てることが重要です。しかし、この時期に早期教育や習い事を始める家庭は少なくありません。習い事などで刺激されるのは「おりこうさんの脳」です。

「おりこうさんの脳」は1歳頃から育ちますが、発達の中核をなすのは6〜14歳頃であり、18歳頃まで時間をかけてゆっくりと発達します。幼児期から「おりこうさんの脳」ばかり刺激された子どもは、幼少期は大人の言うことをよく聞く、「賢くておりこうさんな子」として周囲の評判も上々でしょう。

ところが小学校高学年から中学生くらいになると、不登校や摂食障害、不安障害など、さまざまな問題を抱えるケースが非常に多く見られます。「からだの脳」が育つ前に「おりこうさんの脳」ばかり育ててしまうと、脳全体がアンバランスな状態になり、やがて心の問題として顕在化してしまうのです。

繰り返しになりますが、脳の三つの機能には発達する順番があり、それぞれのバランスをとることがとても重要です。脳を一軒の家にたとえるなら、1階が「からだの脳」、そして2階に「おりこうさんの脳」があります。この家を作る際、1階部分がまだ完成していないのに、2階部分から作り始めてしまうと家全体が崩壊します。まずは1階部分を作り、ある程度、形ができてから2階部分に着手する。そして最後に1階と2階をつなぐ階段部分にあたる「こころの脳」が完成するのです。

まずは「からだの脳」をしっかり育てるべき

人間はゆっくり成長する生き物です。そして成長には個人差があります。周りの子どもと自分の子どもを比べ、「あの子はもうアルファベットがスラスラ読めるのに、うちの子はまだ一文字も読めない」「お友達がプログラミング教室に通い始めたから、うちの子も通わせないと」などと慌てる必要はありません。「おりこうさんの脳」だけを大きく育てても、土台となる「からだの脳」が貧弱であれば、どこかでバランスを崩す可能性があります。

幼少期の小さな焦りのせいで、子どもの脳のバランスを大きく崩してしまうと、あとから立て直すのは大変です。「年齢の割にしっかりしている」「もうアルファベットが読める」という短期的な評価を得る代わりに、中長期的な問題を抱えるリスクを冒してまで早期教育をする必要があるのか、私には疑問です。

規則正しい生活により「からだの脳」が育っていれば、その子の心身は健やかに成長します。勉強や友達関係などで少しくらい大変なことがあっても、脳が致命的なダメージを受けることはない、というのが私の脳育ての理論です。

重要なのは「よく食べ、よく眠る生活」

5歳までの子どもは、言うなれば原始人のようなものです。本能のままに生きているという意味もありますが、人間が生まれる過程を見るとその理由がよくわかります。ヒトは、魚類から両生類、爬虫(はちゅう)類、時代を経て哺乳類へと進化する過程で生まれた生き物です。そして実は、私たちは母親の胎内にいる時に、これと同じ進化の過程を一気にたどっているのです。

どんなに遅くても夜の8時までには寝かせたほうがいい

わが家では、娘は生後50日から保育園に預けられ、毎朝7時半頃には登園し、帰宅は夕方6時〜7時頃でした。幼いうちからハードな保育園生活を送っていたわけですが、どんなに私の帰りが遅くなっても夜8時までには娘を寝かせていました。

娘の就寝時刻から逆算して保育園のお迎えに行き、時間がない時には夕食やお風呂は適当にはしょり、それでも間に合わない時はシッターさんの手を借りながら、夜8時に寝かしつけることだけを目標に生活を送っていました。帰宅後に団らんするような時間はほとんどありませんでしたから、娘とスキンシップが取れるのは夜、布団に入ってから眠りにつくまでの間くらい。

それ以外では朝食の時間が、家族全員そろってコミュニケーションを取れる唯一の時間です。娘と一緒にたっぷり眠り、元気いっぱいに目覚め、みんなでモリモリ朝食を食べながら朝の会話を楽しんでいました。

共働き家庭の場合、夕食の支度は仕事から帰宅した夕方6時〜7時頃になることが多いと思います。親心として「なるべく手作りのおかずを提供したい」「栄養バランスを考え、品数を多くそろえたい」という気持ちもわかりますが、そのせいで就寝時刻が遅くなってしまっては、脳育ての観点では本末転倒です。

早寝早起きさえ守れれば、ほかのことは手を抜いてもいい

特に幼少期は「からだの脳」を育てることを何よりも優先すべき時期です。毎日、太陽のリズムに合わせて規則正しい時間に寝起きすること。乳幼児期なら夜8時まで、小学生なら夜9時までには寝かせ、翌朝7時までに起こすことを目標にしましょう。

「そうは言っても、夕食後に後片づけをしてお風呂に入れていたら、あっという間に8時を過ぎてしまう」と思われた方は、すべてを完璧にこなそうとしているのかもしれません。私の脳育ての理論では、早寝早起きさえ守っていれば、「きちんとご飯を食べる」「毎日お風呂に入る」といったことは、多少手を抜いても構いません。

「寝る前に、毎日絵本の読み聞かせをしてあげたい」と思っていても、夜8時を過ぎたならその日は潔く諦めます。1日くらいお風呂に入らなくても死にはしませんし、毎日絵本を読めなくても気にする必要はありません。わが家では夜8時に寝ることを厳守していたので、就寝時刻から逆算して夕食をゆっくり食べている時間がない時には、納豆ご飯とお漬物だけで済ますこともありました。

ただし、毎日納豆ご飯では栄養が偏りますから、時間に余裕がある日に帳尻を合わせていました。夕食が簡素になってしまったら翌朝は野菜たっぷりのスープを用意する、お風呂に入らない日が続けば不衛生ですから、翌朝早起きして入らせる、時間がある週末に好きなだけ絵本を読んであげるなど、1日、1週間単位でバランスが取れていればよしとしましょう。

できれば親も一緒に夜8時に寝たほうがいい

そして、毎晩8時になったら消灯。親自身もパジャマを着て、「今日も早く寝られたね」「お布団、気持ちいいね」などと話しながら、親自身が寝ることを楽しむ姿を見せることで、睡眠の大切さを伝えましょう。

『子どもが「発達障害」と疑われたときに読む本』から抜粋

脳を順番に育ててバランスを整える

まずは土台となる1階「からだの脳」を育てることが大切です。眠る、食べる、命を守る力を育てる前に、お勉強ができるようになることを求めていないでしょうか。
睡眠時間が足りない、朝ごはんを食べないなど、からだの脳が育っていないのは、1階が中途半端にしかできていないようなもの。家の土台としては弱く小さくなってしまいます。

からだの脳は、生きていくための機能(睡眠と覚醒、生命の維持、運動、本能的な情動)がそなわっている部位です。わが子は寝たり起きたり食べたりしているので、からだの脳は育っていると思うかもしれません。けれど、おなかがすいて食べていますか。十分に眠ってしっかり起きていますか。「食事や睡眠がとれない」といった悩みや「発達障害」のような症状があるなら、からだの脳が育っていないかもしれません。

おりこうさんの脳の育て方

土台となる1階「からだの脳」が育ったら、2階部分「おりこうさんの脳」をはじめてのせることができます。

1階ができていないうちから2階をのせ、家具をつめこむ。つまり、幼少期から早期教育や習い事、スポーツなどを習わせようとしても、無理なのは当然です。その結果、「発達障害」のような症状が現れることがあります。

小学校低学年くらいまでは親の言うことを聞き、習い事や学習塾に通って優秀だった子どもが、思春期になると、不安障害などのこころの病気になることも少なくありません。子ども本人が「やりたい」ということを止める必要はないにしても、バランスを欠いていないか、見直してみましょう。

「おりこうさんの脳」は、1歳からおよそ18歳ごろまで、ゆっくり育ちます。その間に重要なのは「睡眠」と「学習」です。

多くの親は知識や情報をつめこみ、お勉強ができるようになることをめざしますが、「学習」とは、勉強だけではありません。しっかり脳を育てるには、勉強の点数を気にしないことです。点数よりも意欲や努力をほめたり励ましたりして、興味や視野を広げるように促します。お勉強で育っていく脳ですが、それだけでは不十分です。勉強以外のさまざまな知識や情報が脳に入るようにいろいろな体験をさせましょう。

こころの脳の育て方

「からだの脳」と「おりこうさんの脳」がしっかり育っていると、その上に「こころの脳」を育てることができます。こころの脳は、からだの脳とおりこうさんの脳に知識や経験が蓄積され、それを前頭葉で統合するかたちで、10歳ごろから育ちはじめます。

からだの脳と前頭葉をつなぐ神経回路もこころの脳で、10歳以降につながりはじめます。神経回路のひとつにモノアミン神経回路があり、精神の安定や論理的思考などを担っています。感情のコントロール(不適切な喜怒哀楽をそのまま出さないようにコントロールする)、論理的思考(知識や情報が前頭葉で整理・統合され、考えることができる)、コミュニケーション(相手のことを考えながらコミュニケーションがとれる)、想像力(人の気持ちや自分がおかれている状況をイメージして適切に行動する)ことができるようになるのは、「こころの脳」が育つ段階になります。

こころの脳を育てるには、子どもへよいかかわり方をしていくことが大切です。

・生活リズム

こころの脳をしっかり育てるにも、最優先は生活リズムが整っていること。「早寝早起き朝ごはん」を心がけましょう。

・不安をなくす

からだの脳ができていないうちに勉強で大きな負担をかけると、ストレスから不安に陥ってしまうことがあります。ようすをみて、負担を軽減し、安心させるよう働きかけることも大切です。

・おしゃべり

楽しい雑談は、こころの脳を発達させます。まず子どもの話を聞きましょう。

・声かけ

脳はくり返し入る刺激を重要なものと判断します。常にポジティブな声かけをしましょう。

・スキンシップ

思春期にかかるとハグなどはいやがることも。肩をたたく、ハイタッチなどでOK。

過干渉

過干渉とは行き過ぎた干渉の事で行動を制限したり決定を本人に任せないなどの事です。ここでは親子関係での過干渉について書きます。子供にとっては意見が無視されてストレスがたまります。自分でやった達成感が無くて自己評価の低い人間、不安だらけの人間、合わないとしてすぐに変えてしまう人間、人付き合いが狭い人間、無気力な人間、決められない人間、になるケースが多いです。吉田塾では最初に面談をします。私がお子さんに質問をしているのにすぐに口を挟んでしまうお母さんがいます。『やれやれ、少ししんどい生徒が来たぞ。』が私の本音です。お子さんが出来ないから親が決めてしまう、やってしまう、やる道筋を指示してしまう、それの一部を塾に依存するのです。それもわかります。そのことによってますます出来ないお子さんが育っていきます。中学生になって過干渉で育ってきた人の干渉をやめるのは難しいです。干渉しなければ出来ないのも事実です。朝起きられない、学校に行けない、忘れ物が多い、勉強をしない、等なのに親が言わずにどうするの?という意見はごもっともです。ちなみに過保護は甘やかせ過ぎの事ですがここでは触れません。過干渉から抜け出すために、子供は自分とは違うと理解することです。まずはここからスタートです。出来るだけ距離を置くことです。中学生の親は好きなことを見つけて子育て以外にエネルギーを注ぐようにしましょう。適度な距離感を見つける努力をしてください。過程を褒めてください。結果が出たらそこも褒めて下さい。結果が出なくても干渉しすぎてはいけません。親が塾を変えるなどしてはいけません。干渉することで良い結果が出るように思いますが、意外とそうではない上にテストの点数以上の大切なものを見失うことにならないためにも勉強での過干渉は絶対にいけません。無関心や放置は大きな問題です。そういう人は塾には来ないので私には良くわかりません。塾に来る生徒の親御さん、特にお母さんには過干渉と思われる人がいます。そんなお母さんのお子さんはたいていがここに書いたような問題を抱えています。塾に来ると機嫌よく勉強してくれる人が多いですが、自由にやらせて周りと競う事や褒める事や勉強以外の価値にも重きを置いた会話をしているからだと思っています。ご家庭でも実践すると色んな事が良くなります。自分自身がとても楽しくなります。

 

愛情不足

「買い物に行くから車で送って欲しいって言われてもお母さんも疲れたから無理。1人で電車に乗って行ってきて」

「お前はいつからこんな人間になってしまったんだ。これ以上お父さんを困らせないでくれ」

「サボったらダメでしょ。頑張りなさい」

お子さんに、こんなことを言ったことのある親は少なくないのではないでしょうか? こうした言葉を使えば使うほど、子どもは親のことが信頼できなくなります。自分は親から愛されていないと感じてしまうため、いわゆる「愛情不足」になってしまい、悪化すると、問題行動につながることもあります。

愛情不足の原因は「気持ちのズレ」

子どもが愛情不足だとしても、親がすべて悪いわけではないということです。なぜなら、親は子どものためを思って行動しているからです。ただ、愛情の方向がズレている(子どもが求めていることではない)と、愛情不足になってしまいます。

では、愛情不足になると、子どもにどんな変化が起こるのでしょうか。

① 甘えの増加

どんな子どもも、親から愛されたいと思っています。そのため愛情不足になると、「愛情をもらう行動」が増えます。いちばんわかりやすいのが、「要求(甘え)が増える」ことです。「飲み物 を取って」「服を買って」「豪華な夜ご飯を作って」これらは、子どもなら誰でも持っている要求です。1日1~2回なら、まったく問題ないでしょう。ただ、要求が極端に増えてきたら、愛情不足になりかけているかもしれません。

② わがままへの発展

愛情不足が続くと、ただの甘えから理不尽な要求(わがまま)に発展します。高額なものを要求したり、「飲み物を取れ」「車で送っていけ」と暴言を吐いたり、要求を断ると暴れたりするのです。ここまで来ると、少し危険でしょう。

③気力の低下

子どもの気質によっては、気力がなくなることもあります。これは「私は親から愛されていない、価値のない人間だ」と感じてしまうからです。すると心がつらくなって朝ベッドから起きられなくなったり、自分の体を大切にできなくなったりします。自分の未来にも、希望を持てなくなるのです。

では、子どもが愛情不足になりかけていたら、どんなことに注意すればいいのでしょうか。次の3つ言葉だけは、言わないほうがいいでしょう。

(1)「甘えの増加」時に言ってはいけない言葉

愛情不足の初期段階では、甘え(要求)が増えます。その時に言ってはいけないのは、「無理」と子どもの要求を頭から否定する言葉です。これを言うと、愛情不足はさらにひどくなります。

「できるだけ応えよう」という姿勢が大事

親も忙しいので、子どもの要求にすべて応えることはできません。大事なのは、「できるだけ応えよう」という姿勢を見せることにあります。こういった態度に、子どもは愛情を感じるからです。

(2)「わがままへの発展」時に言ってはいけない言葉

こういったときに大事なのは、子どもの人格は否定せず、気持ちは理解し、無理なことは無理と伝えることです。無理なことは無理だと伝えないと、子どもの要求はどんどんエスカレートするので注意しなければなりません。

なお、上記のような理不尽な要求以外にも、聞いてはいけない要求が3つあります。「人に迷惑をかけること」「人を傷つけること」「法律やルールに違反すること」です。こう言った要求には、毅然とした対応が必要です。

(3)「気力の低下」時に言ってはいけない言葉

気力が低下しているときに頑張らせようとすると、子どもは本当に倒れてしまいます。

自分の気持ちを理解した声をかけてくれると、親の愛情を感じます。再び元気になれば、また学校に行けるようになるはずです。

もちろん、不登校にはさまざまな原因やきっかけがあります。友達とトラブルが起こっていて、どうしても行けないこともあるでしょう。発達障害があり、学校の授業を受けたくても受けられないこともあります。先生から理不尽な指導を受けて、心が傷ついているかもしれません。ただ、子どもの気持ちを理解した声をかけることが、解決の第一歩になるはずです。

このように、愛情不足が解消すれば、子どもの気力(エネルギー)がアップします。そのエネルギーで、学校に行ったり、宿題をしたりできるようになるのです。また、理不尽な要求(わがまま)も減ってきます。さらに愛情が伝わると、どんどん自立するようになるので、子育ても楽になるでしょう。

吉田の感想 こうした記事を載せると子供が上手くいかないのはすべて自分が悪いのだと責任を背負ってしまう人がいます。そう考えるのではなくて今からさらに良くするためには自分にも出来ることがあるのかも知れないと考えてください。子供が上手くいかないのは親の責任だけではなくて学校での何らかのきっかけによる場合が大きく、そこはどうしようもない場合もあります。その中でも出来ることがあると考えてください。

 

学校での子供の身体的負担

各自治体で子どもの医療費軽減の動きが活発化した頃から、整形外科を受診する子どもの数が増加したという。腰痛を訴える子が多くみられたので、調査を始めたところ、腰の痛みを引き起こす原因の一つに「体育座り」があることが分かった。それなら、あぐらなど別の座り方なら良いかといえば、そういうわけではないという。

「腰に負担がかかるのは、長時間同じ体勢でいることです。『体育座りがダメであぐらが良い』ということではなく、ちょっと痛いなとか、苦しいなと思ったら、自分で座り方を調整してもよいという本人や学校の認識が大事になります」

体育座りのほかにも、学校には、体に良くないルールや慣習がある。座った姿勢で机の板が肘の位置とほぼ同じ高さにくるのが正しい高さだと習っているが、実はこの高さだと鉛筆でノートを書くには低すぎるというのだ。                       「鉛筆の場合、書字の際に必ず肘が机に置かれた状態で文字を書きます。この姿勢で考えるならば、机はもっと高い位置にあるほうが、腰が曲がらず、体への負担が少なくなります」

「重たすぎるランドセルによる通学」を指摘する意見もあった。特に近年は小学校でもデジタル化の影響でタブレットやノートパソコンを持ち歩くことも多くなった。既存のノートと教科書だけでも重かったランドセルがさらに重くなり、子どもたちの肩にのしかかっている。

「海外のように布製のリュックではだめなのかなと感じます」

「ランドセルは底がしっかりしているので、硬い面で荷物が支えられ、形状としては悪くありません。そのことよりも、中に入れる量があまりにも多ければ、腰が曲がり、腰痛の原因になってしまいます」

体温調節一律おかしい

 中学生と高校生の母親が疑問を抱くのは、下着に関する慣習だ。女性の子どもが通う学校では、体育の授業で体操服に着替える際、体操服の下にはなにも着ないようにというルールがあったという。                                 「汗をかいて下着がぬれた状態で服を着ると風邪をひくといった理由だと思いますが、学年が上がると女子は胸も気になります。娘に下着を着けたらと勧めても、『着ちゃいけないルールだから』とかたくなに拒む。おかしいですよ、やっぱり」

「冬寒くてもひざ掛けも使えない。体温調節に関することが一律で決められすぎている」                      一律の決まりがあれば管理はしやすくなる一方で、子どもが自分で考える力は削がれていく。下着を着るのを拒む女子児童のように、周りと違うことはいけないという刷り込みにもなる。

吉田の感想 保護者の皆さん、学校まで歩いたことはありますか。なかなか大変ですよね。重たい荷物を背負って暑い日も、雨の日も歩いて通います。そこから一日が始まります。沢山の子供がいて色んな子がいます。管理する先生は大変で一律なものを求めてきます。子供同士のトラブルは日常茶飯事です。自分の子供は強く育てようと心がけました。勉強や常識に多少は目をつぶっても逞しく育ってほしいと思ったのは15年以上昔です。どんどん世の中は変わっていてさらに難しいです。